特許適格性に関する宣誓書(Subject Matter Eligibility Declarations:SMEDs)の取り扱い
- IPBIZ DC
- 2025年12月4日
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米国特許商標庁(USPTO)は本日、特許適格性に関する宣誓書(Subject Matter Eligibility Declarations:SMEDs)の取り扱いについて、審査官および出願人・代理人向けに二つの新たなガイダンス文書を公開しました。新任の長官である John A. Squires 氏は就任直後、分散型台帳技術および医療診断分野の特許二件に自ら署名し、急速に発展する応用技術分野においても、適切に要件を満たした発明は積極的に保護するという強い姿勢を示しました。また近時先例化された In re Desjardins 事件では、機械学習モデルの機能改善が「実際の技術的応用」として特許適格性を支持し得ることが明確化され、AI 技術の審査運用にも大きな影響を与えています。
こうした流れの中で発表された今回のガイダンスは、SMEDs の役割と運用方法を明確にするものです。審査官向けのメモランダムでは、SMEDs が任意提出の Rule 132 宣誓書として扱われ、提出された場合には技術的改善や出願時点の技術水準、または司法例外が実際の技術に統合されていることを示す事実などを、審査官が証拠として適切に評価しなければならないことが示されています。評価は「証拠の優越」基準に基づいて行われ、提出された証拠がクレームの技術的性質を支持する場合には、審査判断に実質的な影響を及ぼすものとなります。
一方、出願人・代理人向けのメモランダムでは、SMEDs を特許適格性の論点に専念した独立の宣誓書として提出することが望ましいとされ、適格性以外の論点と混在させると審査が不必要に複雑化する可能性が指摘されています。また、SMEDs は客観的事実に基づくものでなければならず、元の明細書に含まれない新規事項を補う目的で使用することはできません。あくまで、クレームに示された技術的特徴が実際に技術的改善をもたらしていることを客観的に示す補助的材料として位置付けられています。
これらのガイダンスは、特許適格性の審査手続を変更するものではなく、既存制度の枠内で証拠提出の方法と評価基準を明確化することに主眼があります。特に AI やソフトウェア、医療診断など、適格性の判断が難しい分野において、出願人が自身の技術的貢献を裏付ける実証的情報を提出しやすくなるとともに、審査官側も一貫性ある判断を行うための指針が提供されました。USPTO は今回のガイダンスを通じて、審査の透明性を高め、技術分野を問わず特許適格性の原則をより安定して適用することを目指しています。これらの文書は本日から即時適用され、審査官および一般向けの追加トレーニング資料も順次公開される予定です。
米国特許商標庁(USPTO)は、Subject Matter Eligibility Declarations(SMEDs)に関する実務を明確化するため、Rule 132 に基づく宣誓書提出の最良の方法について新たなガイダンスを発表しました。本メモランダムでは、特許適格性(SME)に関する宣誓書は、他の論点、たとえば進歩性に関する二次的考慮事項や結合動機といった内容と混在させず、独立した文書として提出するべきであると推奨しています。併せて、審査官向けメモランダムも付属し、出願人が任意で提出できるSMEDの役割や審査官が取るべき対応が再確認されています。
USPTOは、SMEDsが特許適格性に関する証拠を提出するための特別な役割を担っていることを強調しています。特許適格性の判断では、クレームに記載された発明と提出される証拠との間に明確な関連性が求められます。SMEDsは、技術的改善が明細書にどのように開示され、それを当業者がどのように理解するかを示すための客観的資料として機能し、発明が米国特許法第101条の要件を満たすことを裏付ける重要な手段となります。また、SMEDはあくまで既存の明細書の内容を補強するためのものであり、新規事項の追加とみなされるような内容を含めることは許容されません。さらに、提出は適時に行われる必要があり、クレームの内容と密接に結びついていることが求められています。
本メモランダムは、SMEDs を他の証拠・意見と混在させることのリスクについても明確に説明しています。Rule 132 に基づく宣誓書は、複数の法的論点に関する拒絶を同時に扱うことは可能ですが、特許適格性に関わる証拠と、進歩性や動機付け、あるいは予想外の効果といった別の論点を一つの宣誓書に盛り込むと、審査官が証拠の範囲と重み付けを適切に判断することが難しくなる可能性があります。MPEPにおいても、特許適格性と進歩性に関する宣誓書は異なる目的と評価基準を持つことが明示されており、これらを分離して提出することで審査がより明確になり、審査官の判断を支援することにつながるとされています。
さらに、審査官向けメモランダムでは、提出されたSMEDsを含むすべての証拠と主張を丁寧に検討し、特許適格性の拒絶を評価するよう指示しています。もし特許適格性以外の論点とSMEDが一つの文書に混在している場合、審査官はSMEに関連する証拠を特定することが難しくなり、結果として宣誓書の証拠価値が十分に発揮されないおそれがあります。このような実務上の課題を回避するためにも、SMEDs の独立提出が望ましいと強調されています。
本ガイダンスは、USPTO自身の研修資料や実務用ツール、また連邦巡回控訴裁判所の判例とも整合する内容となっています。これらの資料はいずれも、宣誓書は扱う論点に応じて明確に構成されるべきであり、審査官が誤解なく評価できる形で提出することが重要であると示しています。また、多くの特許実務家のガイドラインにおいても、特許適格性と進歩性といった異なる法的評価基準を一つの宣誓書にまとめることは避けるべきとされており、それぞれに応じた宣誓書を別途用意する方が望ましいと推奨されています。
USPTOは本メモランダムを通じて、出願過程における証拠記録の明確化、審査の一貫性向上、そして適切な特許保護の促進を図っています。特許適格性に関するSMEDsを他の論点と分けて提出することで、証拠の関連性が明確になり、審査官の判断も容易となり、結果として宣誓書の説得力が高まることが期待されます。
米国特許商標庁(USPTO)は、特許適格性(Subject Matter Eligibility:SME)の審査をより明確かつ一貫して行うため、Subject Matter Eligibility Declarations(SMEDs)の役割と審査官が取るべき対応について、新たなガイダンスを公表しました。本メモランダムでは、出願人が任意で提出できるSMEDsの意義を再確認するとともに、審査官がその内容を適切に評価するための基本的な考え方が示されています。
長官 John A. Squire 氏は就任直後、分散型台帳技術および医療診断に関する特許に署名し、これらの分野が長年直面してきた特許適格性の混乱に対して明確な姿勢を示しました。その後に発表された Appeals Review Panel の In re Desjardins 決定では、複数の機械学習タスクを維持しながら学習を進める技術が「抽象的なアイデアを実質的な技術的応用へ統合している」と判断され、Step 2 の要件を満たすとして101条拒絶が取り消されました。この決定では、機械学習モデルの動作そのものを改善する発明を特許適格と認めるべきであるとし、米国がAI分野で競争力を維持するためにも過度に広い101条拒絶を行うことへの警鐘が鳴らされています。Squires 長官はこの判断を先例化し、AIやデータ処理技術などにおける性能向上が特許適格性の評価において重要な意味を持つことを明確にしました。
今回の審査官向けメモランダムでは、出願人が提出できるSMEDsの位置付けが改めて整理されています。SMEDs は Rule 132 に基づく既存の宣誓書制度の一部であり、特許適格性に関連する事実を明確に記録するための任意の手段として扱われます。提出された宣誓書は、審査官がクレームの技術的内容を理解し、発明が抽象的な概念を超えて具体的な技術的改善を実現しているかを判断する際に役立つものであり、審査記録の透明性と精度を高める役割を担います。審査官は、宣誓書が形式要件を満たしていれば、提出された証拠を記録全体の一部として適切に評価し、特許適格性の判断を「証拠の優越(preponderance of the evidence)」基準に基づいて行う必要があります。
SMEDs が審査において有効となるのは、クレームに記載された発明と宣誓書に含まれる証拠との間に明確な関連性が存在する場合です。SMEDs では、当業者が明細書をどのように解釈するか、発明が技術分野におけるどのような改善をもたらすのか、また出願時点の技術水準がどのようであったかといった事実が示されることがあります。これらの証拠は、抽象的なアイデアに対する技術的応用の有無、コンピュータ機能の改善、ニューラルネットワークの性能向上、または特定の治療・予防方法における具体的適用などを示す場面で特に有用となります。ただし、宣誓書で新たな技術内容を補うことは許されず、あくまで出願時点で明細書が示していた情報を裏付ける事実を提供するものでなければなりません。
審査官は提出されたSMEDsを他の証拠と併せて総合的に評価し、適格性の判断が維持される場合でも、撤回される場合でも、その理由を明確に記録することが求められています。メモランダムでは、SMEDs が特許適格性に関する疑問点を補完し、発明の技術的意義をより明確に示すものとして活用できることが強調されています。特にAI・ソフトウェア、医療診断、データ処理など、新興技術領域における特許適格性判断の複雑さを踏まえ、SMEDs は発明の技術的貢献を丁寧に示すための重要な手段となり得ます。
今回のガイダンスは新たな審査手続を導入するものではなく、既存の規則とMPEPに基づき、審査官がSMEDsを適切に評価するための理解を深めることを目的としています。USPTOは、審査官向けの研修資料や技術センターごとの実務支援ツールを通じて、特許適格性審査の一貫性と透明性を高める取り組みを続けており、本メモランダムもその一環として位置づけられています。




