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大統領令:H-1B(就労ビザ)申請費用大幅引き上げとAI導入が特許実務に与える影響

  • IPBIZ DC
  • 9月21日
  • 読了時間: 3分

H-1Bビザは、米国で専門職として就労することを認める代表的な労働ビザであり、通常は3年間の在留許可が与えられ、その後1回更新することで最長6年間の滞在が可能となります。6年を超えて滞在し継続して米国で働くためには、永住権(グリーンカード)の申請が必要となります。このH-1Bビザはこれまで、米国で外国人の専門知識や技能を活用するための主要な制度として広く利用されてきました。


しかし現在、H-1Bビザの申請費用を年間で10万ドル(約1500万円)規模と大幅に引き上げる大統領令に署名(9月19日付)され、外国人専門職の採用環境に大きな変化がもたらされようとしています。加えて、トランプ政権はAI開発に莫大な資金を投入し、特許関連業務を含むホワイトカラー分野へのAI導入を加速させています。これら二つの政策の方向性は、米国の特許実務に直接影響を及ぼし、お客様の米国特許戦略においても無視できない要素となりつつあります。


申請費用の引き上げは、米国の特許法律事務所や企業が外国人弁護士や特許技術者を採用する際に大きな経済的負担となり、特にバイリンガル人材の確保を困難にします。日本からの出願案件においては、日本語の明細書を理解しつつ米国の特許制度に精通している人材の存在が案件進行の質を大きく左右しますが、こうした人材を現地で確保するハードルは今後一層高まることが予想されます。


AIは翻訳や先行技術調査、オフィスアクションへの初期対応といった定型業務の多くを代替できる可能性がありますが、発明者の意図を正確に把握し、文化的背景や技術的ニュアンスを米国の法的枠組みに沿って調整する能力は依然として人間の専門家に依存しています。そのため、米国現地に在籍する外国人実務者、とりわけ日本人実務者は、言語や文化の橋渡し役としてAIでは補えない価値を提供し続けています。


今後、H-1Bビザの申請費用引き上げによって外国人実務者の新規雇用は減少していくと考えられる一方、すでに米国に根を下ろして活動している日本人実務者の存在は一層重要性を増すでしょう。現地に日本人実務者がいることにより、日本の知財部や発明者が母国語で安心して相談でき、米国特許実務への迅速かつ的確な対応が可能になります。さらに、米国人弁護士と密接に連携しながら、国際的な視点を持ち込んだ戦略提案を行うことで、お客様にとって米国での知財活動を強力に支える存在となります。


AI導入とビザ政策の変化は米国の人材構造を大きく揺るがそうとしていますが、そうした中でも現地の日本人実務者はお客様にとって代替不可能なパートナーとなります。今後の米国特許戦略においては、AIの活用とともに、この貴重な現地人材をどのように活かしていくかが競争力維持の鍵となるでしょう。


 
 

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