USPTO、特許審査ハイウェイ(PPH)の新たなドケット運用を開始—迅速審査と制度の持続性を両立へ
- IPBIZ DC
- 11月2日
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特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway、PPH)は、国際的な特許出願の迅速化を目的とした制度であり、知的財産戦略を重視する企業や個人にとって、今や欠かせない仕組みとなっています。ある国の特許庁で特許可能と判断されたクレームについて、他の参加特許庁でも迅速な審査を受けられるという相互協力の枠組みは、グローバルなビジネス展開を行う上で大きな利点をもたらしています。先行する審査結果を活用することで、重複する審査負担を軽減し、出願人はより短期間で権利化を目指すことが可能になります。
2024年には、米国の出願人によるPPH申請件数が約11,000件に達し、制度の利用が定着していることがうかがえます。米国特許商標庁(USPTO)では、このうち約8,600件が同庁でのPPH出願であり、全体の出願のうち2%未満を占めています。件数の割合としては小さいものの、これらの出願の平均ファーストアクション・ペンデンシー(最初の審査結果が出るまでの期間)は約7.5か月と、通常出願よりもはるかに短い点が特徴的です。一方で、非PPH出願の審査期間は2020年には15か月未満であったのが、現在では22か月を超えており、審査の遅延が顕著になっています。このような背景のもと、USPTOはPPH制度の持続的な運用を確保するため、新しいドケット運用方針を導入しました。
新しい方針では、PPH出願の審査順序を非PPH出願のペンデンシーに応じて調整し、同一技術分野における非PPH出願の審査期間のおおよそ半分の期間でPPH出願を処理することを目標としています。つまり、非PPH出願の審査効率が改善されれば、その改善効果がPPH出願にも波及し、制度全体のバランスを保ちながら迅速な審査が維持される仕組みです。これにより、PPH出願は引き続き迅速審査の恩恵を受けながらも、全体として公平な審査リソースの配分が図られることになります。
USPTOのこの取り組みは、単に審査のスピードを追求するだけでなく、審査制度全体の健全性を確保し、長期的なPPH制度の価値を守ることを目的としています。PPHの本質は、各国の特許庁が信頼関係のもとに協力し、出願人が複数国でより円滑に特許権を取得できるようにする点にあります。今後もUSPTOは、非PPH出願の審査遅延を解消しながら、PPH制度を効果的に運用し続けることにより、すべての出願人にとってバランスの取れた特許審査環境を維持していく方針を示しています。
PPHの制度的意義は、国際特許戦略を考えるうえでますます大きくなっています。迅速化だけでなく、審査の効率性や予測可能性の向上、そして各国特許庁間の協力強化といった観点からも、今後の特許行政における重要な柱の一つであり続けるでしょう。




