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USPTO、新たな『簡素化クレームセット・パイロットプログラム』を発表——審査効率と品質向上を目指す新試み

  • IPBIZ DC
  • 11月2日
  • 読了時間: 3分

米国特許商標庁(USPTO)は、特許審査の効率化と品質向上を目的として、新たに「簡素化クレームセット・パイロットプログラム(Streamlined Claim Set Pilot Program)」を開始することを発表しました。本プログラムは、出願に含まれるクレーム数を制限することで、審査期間(ペンデンシー)および審査品質にどのような影響があるかを検証することを目的としています。一定の条件を満たしたユーティリティ特許出願(実用特許出願)を対象に、迅速審査(special status)の対象として通常より早く審査を受けることができる制度です。


このパイロットプログラムでは、独立クレームが1件以内、全体のクレーム数が10件以内である出願が対象となります。複数従属クレームは認められず、また従属クレームは本通知に定められた依存形式に準拠している必要があります。応募資格を満たす出願人は、所定の様式に基づく「特別審査請求(petition to make special)」を提出することで、出願を審査順序の先頭に繰り上げることができます。受理された出願は、最初のオフィスアクション(First Office Action)が発行されるまで、迅速審査の対象として取り扱われます。


この新制度は、2025年10月27日から申請受付を開始し、2026年10月27日まで、または各技術センターが約200件の対象出願を受け付けた時点のいずれか早い時期まで実施されます。なお、技術分野によって応募状況が異なる場合や、業務量・運営リソースなどの要因により、USPTOの判断で早期に終了する可能性があります。終了時にはUSPTOが公的に通知を行い、同庁ウェブサイト上で各技術センターごとの申請数および受理数が公表されます。


このプログラムに参加するためには、出願がオリジナルであり、継続出願・分割出願・一部継続出願ではないことが条件とされています。すなわち、35 U.S.C. §120、121、365(c)、386(c) に基づく継続系出願は対象外です。ただし、プロビジョナル出願や外国出願に基づく優先権主張(35 U.S.C. §119)を行っている場合は参加に影響しません。また、ナショナルステージ出願(PCT経由の米国移行出願)は本プログラムの対象外となります。


出願人は、プログラムへの申請時に**「PTO/SB/472」フォーム(CERTIFICATION AND PETITION TO MAKE SPECIAL UNDER THE STREAMLINED CLAIM SET PILOT PROGRAM)を使用し、電子出願システム「Patent Center」から提出する必要があります。さらに、出願書類(明細書、クレーム、要約書)はすべてDOCX形式で提出していることが条件です。DOCX形式は審査効率とデータ品質を向上させるため、迅速審査の実現において重要な要素とされています。


また、プログラムへの参加にはいくつかの追加制限も設けられています。たとえば、同一発明者または共同発明者が、すでに3件を超える本プログラム申請を行っている場合は、新たな申請は認められません。これは、限られた審査リソースを公平に分配するための措置と考えられます。


さらに、非公開出願(nonpublication request)を行っている場合は、プログラム申請時までにその非公開請求を撤回する必要があります(PTO/SB/36フォームを使用)。本プログラムでは、審査の透明性とデータ活用を重視しており、公開出願であることが前提条件となっています。


USPTOはこの取り組みを通じて、審査官がより焦点を絞ったクレーム構成の出願にリソースを集中させることができるとしています。これにより、審査の効率化だけでなく、審査品質の向上、さらには審査バックログの削減につながることが期待されています。また、パイロットプログラムを通じて得られたデータは、将来の迅速審査制度の設計に役立てられる予定です。


今回の「簡素化クレームセット・パイロットプログラム」は、USPTOが2025年に廃止を予定している「加速審査制度(Accelerated Examination Program)」に代わる新しいアプローチとして注目されています。審査の迅速化と質の両立を目指すこの試みは、今後の特許審査制度の方向性を示す重要な一歩となるでしょう。


 
 

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