自明性拒絶(35 USC 103条拒絶)を受けた際、一つの反論として先行技術同士の組み合わせ不備を主張することは一般的です。しかしながら、自身の発明に注目するあまり、組み合わせ不備の論点がずれてしまうことがあります。よくある事例は下記になります。
1.先行技術と自身の発明を比較してしまう(先行技術同士を比較すべきところで)
最もよく見られる誤りの一つは、先行技術同士ではなく、一つの先行技術と自身の発明を比較してしまうことです。反論は、審査官が提案する先行技術の組み合わせが機能しないことを示すためのものであり、先行技術が自身の発明と比べて劣るという主張ではありません。
誤りの例:
出願人が、先行技術が自身の発明のように機能しないと主張する。
正しいアプローチ:
正しい戦略は、審査官が提案した先行技術の組み合わせが機能しないことに焦点を当てることです。たとえば、審査官が二つの先行技術(AとB)を組み合わせて拒絶理由を提示した場合、出願人はAとBの組み合わせが機能しないことを示すべきです。焦点は常に、提案された先行技術の組み合わせが機能しない、あるいは欠陥があるという点に置くべきであり、それらの技術と自身の発明を比較することではありません。
2.無効の根拠となる証拠やサポートを提供しないことです。もう一つのよくある誤りは、無効になるという結論を述べるだけで、具体的な証拠や説明を提供しないことです。ただ「先行技術は一緒に機能しない」と言うだけでは、審査官や特許審判部(PTAB)を納得させることはできません。
誤りの例:
出願人が、二つの先行技術は互換性がないと主張するが、その根拠となるデータや説明、証拠を提示しない。
正しいアプローチ:
反論を効果的に主張するには、詳細な技術的説明を提供し、実験結果や専門家の宣誓書、または技術的な分析を証拠として提示する必要があります。たとえば、二つの先行技術を組み合わせると化学反応が衝突する、電気的に互換性がない、または機械的に機能しなくなるといった場合には、これらの点を明確に説明し、その主張を裏付ける証拠を提示する必要があります。
3.軽微な不一致や簡単に解決できる不具合に焦点を当てる軽微な不一致に焦点を当てたり、簡単に解決できる問題に基づいて反論を展開すると、説得力に欠けます。問題が簡単に解決できる場合、審査官は依然として組み合わせが有効であると主張するかもしれません。
誤りの例:
出願人が、二つの先行技術の間に小さな設計の違いを強調し、その違いが容易に解決できることを見逃している。
正しいアプローチ:
反論を成功させるためには、不一致が重大で解決不可能であることを示す必要があります。組み合わせを実現するためには、根本的な再設計が必要であると証明できる場合に限り、無効論は効果的です。
4.審査官の提案する組み合わせを誤解している
出願人が審査官が提案した先行技術の組み合わせを誤解し、その誤解に基づいて反論を展開してしまうことがあります。
誤りの例:
出願人が審査官が実際に提案している組み合わせとは異なる組み合わせについて反論する。
正しいアプローチ:
反論を提示する前に、審査官の拒絶理由を十分に確認し、審査官がどのように先行技術を組み合わせようとしているのかを理解することが重要です。反論は、審査官が実際に提案している組み合わせに対して行わなければなりません。
5.先行技術の目的を無視する
先行技術の組み合わせに対する反論を主張する際、先行技術の意図された目的を考慮しないことも誤りです。審査官が提案する組み合わせが、自身の発明とは異なる目的を持つ場合、反論をその目的の違いに基づいて展開するのは不適切です。
誤りの例:
出願人が、先行技術が自身の発明と同じ目的を達成できないことを理由に反論を展開する。
正しいアプローチ:
審査官が提案する先行技術の組み合わせが、その意図した目的に対して機能しないことを証明することに焦点を当てるべきです。たとえば、先行技術が異なる分野に関連している場合や、異なる結果を達成するために設計されている場合、その組み合わせがその目的に対して機能しないことを示すべきです。
6.可能な解決策や代替案を無視する
先行技術の組み合わせに問題があるとしても、それが簡単に解決できる場合、反論は効果的ではなくなる可能性があります。
誤りの例:
出願人が、技術的に容易に修正できる問題に基づいて、先行技術の組み合わせが機能しないと主張する。
正しいアプローチ:
無効の根拠が基本的かつ解決困難なものであることを示す必要があります。不適合がある場合、その修正が単純な調整や明白な変更では解決できないことを説明し、組み合わせが機能しない理由を詳細に述べる必要があります。
7.審査官の反論を見越さない
出願人が審査官の反論を見越さずに反論を展開すると、説得力を欠くことがあります。
誤りの例:
出願人が、審査官が指摘する可能性のある反例や解決策を考慮せずに反論を提示する。
正しいアプローチ:
審査官からの反論を予測し、それに対する準備を行うことが重要です。たとえば、審査官が「当業者であれば問題を解決できる」と主張する可能性がある場合、その解決策がなぜ明白でないか、または根本的に設計を変更する必要があるかを説明する必要があります。
組み合わせ不備の反論を効果的に主張するためには、先行技術同士を比較し、しっかりとした証拠や説明を提供し、問題が容易に解決できないことを示す必要があります。これらの一般的な誤りを避けることで、組み合わせ不備に基づく自明性拒絶の反論がより強力で説得力のあるものになるでしょう。